2022.04.21
ITの力で観光も働き方もよりフレキシブルに 【WAmazing株式会社 代表取締役 加藤史子さまインタビュー】
在宅勤務というとここ数年で実際に取り入れる企業が増え、随分一般的になってきました。今、そんなお仕事を探していらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
WAmazing株式会社は東京に本社を置きながら、全国でリモートワーク人材を採用しています。コロナ禍で売り上げが激減した主力のインバウンド向けサービスから大きく舵を切り、新事業を開始しました。それと同時にフルリモートワークを採用しています。WAmazing株式会社は2022年3月、CREATIVE ROOMとシェアオフィス契約を結び、福岡での新たな人材採用を始めています。
今回はWAmazing株式会社代表取締役 加藤史子氏に、どのような思いを込めて会社の運営をしているのか、福岡で求める人材などについてお話を伺いました。
【代表取締役 加藤史子氏プロフィール】
慶応義塾大学環境情報学部(SFC)卒業後、1998年に(株)リクルート入社。 「じゃらんnet」の立ち上げ、「ホットペッパーグルメ」の立ち上げなど、主にネットの新規事業開発を担当した後、観光による地域活性を行う「じゃらんリサーチセンター」に異動。 スノーレジャーの再興をめざし「雪マジ!19」を立ち上げ。 その後、仲間とともに「Jマジ!」「ゴルマジ!」「お湯マジ!」「つりマジ!」…など「マジ☆部」を展開。 国・県の観光関連有識者委員や、執筆・講演・研究活動を行ってきたが、「もう1度、本気のスケーラブルな事業で、日本の地域と観光産業に貢献する!」を目的に、2016年7月、WAmazingを創業。
≪アナログからデジタルへの変換でよりスムーズな旅行を≫
―WAmazing株式会社はどのような事業を展開しているのですか?
加藤史子氏(以下敬称略):
訪日外国人旅行者向けのオンライン旅行エージェントサービスを展開しています。
また、コロナ禍において新規事業となる観光DX推進事業(行政・DMO受託事業)も始めました。こちらは2020年4月にサービスをスタートしまして、開始して今2年程ですね。全国各地の自治体様、観光事業者様の観光DX(デジタルトランスフォーメーション)のお手伝いをしています。例えば、スキー場を思い浮かべて欲しいのですが、スキー場ではまずリフト券を購入しますよね。これまでは朝一でスキー場に行き、窓口に並んで現金でリフト券を購入し、リフト券フォルダーに入れて持ち歩き、乗り場で見せる。そうすると係の方が券の日付を確認し、リフトに乗ることが出来るという、かなりアナログな方式をとっていることが多いです。これをホームページ上でスマホでもリフト券を購入できるようにして、そのリフト券をQRコード化し、現地の自動発券機で読み取ることで交通系ICカードのようなICリフト券を発行するように変更しました。そのICリフト券を持って行くと乗り場の自動改札機を通れるようになっていて、リフトに乗ることが出来る。こういった観光のための手段や観光体験をデジタル化したり、デジタル上に観光商品を載せていったりというような、観光事業のデジタル化推進支援事業を行っています。
自治体様、観光事業者様の観光DX支援を通して、その仕組みを自社のプラットフォームサービス(旅行予約サービス)を経由させることにより、オンライン旅行エージェントとしての自社の商品拡充・サービスの強化にもつながっています。
≪観光産業でありながらリモートで働くことが出来るという強み≫
―どのような思いからWAmazing株式会社を立ち上げたのでしょうか?
加藤:
「観光による地方創生事業をやりたい」という思いから、この会社を立ち上げました。前職では主に国内旅行事業の仕事を行っていたのですが、今は少子高齢化なので、日本人の国内旅行というのは徐々に縮小していく市場なんですね。やはり市場を広げない限り、観光によって消費拡大や経済活性化を行い、地域の役に立つということは難しい、というのを痛感しました。ですので、インバウンドをやりたいな、と思ったんです。インバウンドは日本政府も2030年の目標を来訪者6,000万人、消費額15兆円を掲げる成長市場で、その中でも特に、今は海外の方々に知られていないけれど日本の地方にある “良いもの” を伝えたい、日本隅々まで網羅したローカルの観光資源と外国人旅行者をマッチングしたい、という思いから起業しました。「人が来ないのは人気が無いから」と考える観光事業者様も多いのですが、 “人気が無いから” では無くて、 “知られていないから” だけである場合も多いんですよね。他にも “予約する手段が電話のみで、外国人旅行者には難しい” とか、 “決済方法が現金のみで不便” とか、そういった障害をITの力で丁寧に取り払ってあげれば、もっとお客様が訪れる機会が増えるところは多いと思います。
また、日本の高度経済成長期を支えてきたのは輸出産業である自動車産業や重工業系だと思うのですが、こういった事業は今、産業の空洞化が起こっている。生産拠点を海外に移し、雇用も現地で行うという企業が多いです。ですが、観光産業というものは絶対に海外に生産を移すことは出来ません。観光地というのはその土地にあるものですから。必ず海外から日本に来てもらって、日本の中で消費が行われます。空洞化することは無いし、雇用も生まれる。さらに外貨の獲得にもつながる。ある意味、輸出産業だと思っています。日本の中の雇用を増やし、その点でも地域活性化に貢献したい、という思いも強いですね。
―「地方にいながら、東京でしか出来ないような仕事が出来る」というメリットは大きいですよね。
加藤:
若い人が故郷を捨てて東京などの都市部に出る理由のナンバーワンは「地元には仕事が無い」ですよね。地方には中々自分の求めることが出来るような企業が無い。東京には職業選択の自由があるんです。特に女性は。地方に行くと、第一次産業・第二次産業は多いのですが、この二つは男性の正社員採用は多くても女性はサポートの役回りだったりすることが多いんですよね。やはり体力の差の問題などもあると思います。ですが、第三次産業、私たちが行っているような情報産業はそういったものが関係ない。そのような企業はこれまでは都市部ばかりに集中していたのですが、こういった産業こそ、実は場所が関係なくリモートで働くことが出来るんです。弊社は観光業でありながらIT企業であって、コロナ禍を経て、地方の人材を採用することが出来るようになりました。これはすごくチャンスだと思っています。
企業の成長はやはり人にかかっています。特に、成長が早いスタートアップ企業ではその傾向が強いです。弊社では性別や住んでいる場所などは関係なく、その人のやりたいことやキャリアがマッチして能力があるかどうかの方を重視します。女性、子育て中、外国人、地方在住などの、就業機会が減ってしまう可能性があるけれど、実は高い能力を持っている方々にも平等の機会を提供したいと思っています。地方採用、ワーキングマザー採用、外国人採用は強化しています。現在、従業員は130名ほどですが、そのうち4割は外国人ですし、全体の6割は女性です。地方在住の方も全体の4割を占め、全国21都道府県にメンバーがいます。
≪リモートで働く上で忘れてはいけない重要なこととは?≫
―CREATIVE ROOMとサテライトオフィス契約し、福岡進出をした理由を教えてください。
加藤:
全国に従業員が増えてくると、リアルで集まることの出来る場所が各地にあった方がメリットがあると考えています。やはり、雑談とか、人間関係を作るというのはリアルの方が向いています。ですので、たまにチームで集まって会議をする場を、東京の一極集中ではなく、多拠点分散型で全国に持ちたいと考えています。福岡にシェアオフィスを構え、九州の採用もますます強化していきたい、という思いが強いですね。現在はコロナの状況に合わせてですが、チームごとに週一回はリアルで集まってミーティングしよう、ということも行われています。福岡でも人数が増えてきたらCREATIVE ROOMを使ってミーティングを開いたり、気分転換で家ではなくコワーキングスペースで作業をしたり、といった使い方をして欲しいと考えています。その時に、お子さんが小さい方は預けていただくことも出来ますし、より働きやすい環境を提供できると考えて契約しました。
旦那さんの転勤に合わせて自分の仕事を辞めてついてきた、という専業主婦の奥様もいらっしゃると思いますが、福岡にはそんな方が多い、というようなお話も聞いています。そういった、パワーを持て余している方とか、社会とのつながりを持ちたい、仕事をしたい、といった方々を積極的に採用していきたいと考えています。
(沖縄営業所の様子)
―どのような人材を求めているのでしょうか?
加藤:
3点あるのですが、まず1番はWAmazing株式会社のビジョンにマッチする方です。弊社が掲げるビジョンとして「日本中を楽しみ尽くすアメイジングな人生に」というものがありまして。それに共感していただける方というのが最優先するポイントですね。
2番目に重視するのは、スキルの部分ですね。中途採用ですので、能力的な部分でマッチする方。この1番目と2番目の採用基準はリアル採用の場合でも同じです。
3番目は、こちらはフルリモートだからこそ関わってくるところになりますが、セルフマネジメント力があるかどうか、という点です。リモートワークだと周りに他の従業員がいるわけでも無いので、サボろうと思えばサボれるわけです。ですが、そうやってダラダラ働いていては生産性も上がらないので、例えば「今日は体調が悪くてあまり効率が上がらないから休もう」「少し集中して仕事を進めないといけないタイミングだから今日は頑張ろう」というように自分で自分をマネジメントして効率を上げる働き方が出来るか、締め切りをしっかり守るスケジューリングが出来るかどうかが重要ですね。総労働時間は関係なく、アウトプット重視です。それが出来ないと、逆に働き過ぎて追い詰められてしまったりすることが多いので、自分のワークライフバランスを整えて自律出来る方を求めています。
≪企業にとってもメリットの多かったリモートワークへの移行≫
―会社にとって、リモートワークに移行することでのメリットはありましたか?
加藤:
一番メリットに感じたのはやはり採用の部分ですね。場所にとらわれずに弊社のビジョンにマッチする優秀な人材を採用できるようになったのが何よりのメリットでした。新規事業の拡大に伴い、この一年で50名以上の新規採用を行っています。全国各地から人材を募集することが出来るようになり、速度は加速したと思います。
また、以前は東京のオフィスに勤務する従業員とリモートで働く従業員との間に情報格差や、リモートの従業員がなんとなく疎外感を感じてしまうということがありました。ですが、フルリモートにしたことにより、全従業員が同じ環境になり、情報格差も疎外感もなくなりました。直近での入社者も多く、フルリモートでの就業が前提ですので、新しく入る方もなじみやすい環境が出来ているのではないかと思います。
≪仕事も家庭も、どちらも大切にしたい方へ≫
―リモートワークを経験したことが無い方へ向けてのサポートはどのようなものがありますか?
加藤:
やはり、経験したことが無いと不安になる方が多いので、まずは面接や面談の場でお伝えいただくように促しています。上司との1on1の場を定期的に設けたり、チーム内でリモートで集まって昼食を食べたり、拠点に人数が増えれば週一回はリアルで会う場を設けるなど、色々なサポートを行っています。周りも全員がリモートワークですので、ペース配分のコツや気分転換の方法など、悩み事は気軽に相談しやすいのではないかと思います。
昨年のコロナ流行が落ち着いていたタイミングでは、東京に各地の従業員を集めた取り組みも行いました。参加は任意ですが、そういった全社集合のイベントも半年に一度くらいは行っていきたいと考えています。
あとは “リモート手当” という制度があります。自宅の仕事環境を整えるための手当を支給するものです。長時間座っても疲れにくい椅子を購入したり、自宅のWi-Fi環境を整えていただいたりといったことに使っていただくことが出来ます。対人といったソフト面、仕事環境といったハード面、どちらもサポートする仕組みを作っています。
―働きたいママにWAmazing株式会社をすすめるポイントを教えてください。
加藤:
成長産業で働くことで、自身も成長することが出来るという点です。
観光やインバウンドはコロナ禍を経て必ず再成長する市場です。今最も経済成長しているのはアジアの国々です。これからどんどん豊かになっていくアジアの国々は国内の平均年齢も低く、若い人たちがとても多い。そういったアジアの国々の人たちが、先に成長していて距離的に一番近い国、日本に観光にやってきます。日本の政府目標としてもインバウンドを伸ばすというのが掲げられています。このような圧倒的な成長産業で働くということは、自分自身を成長させることが出来ると考えています。
また、「今は子供が小さいから家庭優先で時短だけど、中長期的にはキャリアを伸ばしていきたい」と考える方も合うのではないかと思います。弊社は基本的には “バリキャリ” 思想の方を求めているんですね。私も過去、そうだったのですが、前職時代は子供が小さい頃に在宅勤務を使わせていただいていました。もう15年ほど前のことなのですが、当時、在宅勤務はとてもめずらしく、社内で制度を使った第一号社員でした。ですから「仕事は大好きでキャリアを伸ばしたいけれど、子供の小さいうちは柔軟な働き方をしたい、という形を求めている方はきっといるな」と考えていました。弊社はその働き方を提供することが出来ます。自分のキャリアを諦めたくない、というママに是非来ていただきたいですね。
≪日本の未来を支える、成長産業で働くということ≫
加藤氏は最後に、「海外の方々に知られていない日本各地の “良いもの” を、世界中の人たちに知っていただくために、今の事業をもっと伸ばしていきたい」と話して下さいました。地域だけでは解決出来なかった課題を、ITの力で一つ一つ解決していく。そのことが地域の消費を底上げし、さらには事業が拡大することで新しい雇用も生み出していく。
WAmazing株式会社では観光という分野で、リモートワークながらも地域に密着した課題解決に携わることが出来ます。
文:中川文香