2022.11.10
CREATIVE ROOM×井上企画〜新分野に挑戦し続ける木材のプロ〜
スタイルクリエイト株式会社が運営する福岡市中央区大名の「託児付コワーキングスペース&サテライトオフィス CREATIVE ROOM」。
「働くママやパパを応援したい!」という弊社の想いに賛同いただいた「井上企画」様についてご紹介します。「井上企画」様は、CREATIVE ROOMの託児ルームで過ごすお子さまや保護者の方に好評の国産ヒノキを使った安心して遊べる木のおもちゃをご提供いただいています。
◆老舗木材店から生まれた【井上企画】
福岡県大川市にある「井上企画」は、大正元年創業の「井上整材所」を母体とした会社です。企画部の井上隆裕(いのうえたかひろ)さんにお話をうかがいました。
−大正元年に創業された「井上製材所」様が母体ということですが、独立されたきっかけについて教えてください
A:井上さん
木材の販売を中心に行っていた「井上製材所」ですが、木材加工も取り扱っていました。その中で、「アメリカ広葉樹輸出協会」よりアメリカの広葉樹と国産材を使った家具ブランド『kitoki(キトキ)』立ち上げの協力してもらえないかと依頼がありました。ブランドの立ち上げをきっかけに、今後も木材を使った商品開発の機会が増えるだろうと「井上企画」が生まれました。
−主にどのような事業を展開されているのでしょうか
A:井上さん
木材販売の他に、商品開発も行っております。現在では家具ブランドの『kitoki(キトキ)』、ヒノキのおもちゃを提供する『IKONIH(アイコニー)』などを中心にモノづくりをしています。細かい要望にもお応えできる機械の設備も整備し、OEM対応やブランド立ち上げの制作もおこなっています。建築の内装や店舗、オフィス関係の造作家具の制作も手がけています。
−木材販売から始められて、今は木のある暮らしを提案するモノづくりに企画の段階から携わっておられるのですね
◆日常生活に寄り添う家具【kitoki(キトキ)】の魅力
▲アメリカのレッドオーク
−家具ブランド『kitoki』の創業メンバーということですが、その経緯や魅力を教えてください。
A:井上さん
私たちの業界に限りませんが、日本は品質に厳しく、高品質を求めるが故に木材を無駄に消費している背景があります。きれいな天然の木材だけで材料を準備することが難しく、品質を求めると使えない部分が多くでます。
例えば、木材に見られる茶色の丸い模様は節(ふし)と言い、木の枝の部分が幹に残っている状態です。見た目があまりよくないと家具の材料には嫌厭され、廃棄される場合もあります。ブランド発起人でもあるアメリカ広葉樹輸出協会からは、そのような部分を“木の欠点ではなく個性として活かしたい”と話がありました。
当時は節がある家具なんて世の中になかったので戸惑いましたが、木の個性を活かして商品開発をする新しい取り組みに他の企業も賛同し、『kitoki』が生まれました。
節がある木材を有効活用している、エコ・ファニチャーブランドである点が大きな魅力です。
▲kitoki
−今まで節がある家具があまり見られなかった中で、お客様の反応はいかがでしたか?
A:井上さん
やはり最初は抵抗がある方もいらっしゃいましたね。その反面、環境問題に取り組んでいることをポジティブに捉えていただくお客さまも多く、この活動を広めるのにそれほど苦労はありませんでした。
最近はSDGsの取り組みも一般の方に浸透し、それに適合する考え方じゃないかなと個人的には思っています。
◆ヒノキのある子育てを提案【IKONIH(アイコニ―)】の魅力
−CREATIVE ROOMに入ると『IKONIH(アイコニー)』のおもちゃからヒノキがふわっと香り、とても気持ちがよいです。『IKONIH』が生まれた背景を教えてください
A:井上さん
『IKONIH』は、世界各地の木材を扱う「丸紅木材株式会社」さんがブランドを立ち上げ、実際にモノづくりをするパートナーとして弊社に声をかけてくださいました。
国産木材に目を向けて商品開発をしたい丸紅木材株式会社さんの意向で、ヒノキに着目したブランドです。
『IKONIH』のブランド名は、逆から読むとヒノキ(HINOKI)になるんです。
−なんとブランド名『IKONIH』にこんな隠された秘密があったとは!驚きました
A:井上さん
ヒノキは日本人にとってあまりに身近な存在です。その特性や力を改めて見直す機会が少なかったと思います。
ヒノキは耐久性や対腐性が高く、木肌が美しい木です。また自分の腕前を示す晴れの場所を『檜舞台』というように、古くから健在として使われ、「ハレ」のイメージがあります。
そんな素晴らしいヒノキを子どもたちに身近にふれてもらい、そのよさを体験してもらおうと、おもちゃブランド『IKONIH』が生まれました。
今は幼稚園や保育園でも使われるお子さまむけの家具も展開しています。
−良い香りだけでなく、いつまでも触っていたくなる手触りも魅力のひとつです
A:井上さん
作り込みに、とても力を入れていますね。
お子さまが使う物なので、あえて無塗装にして口に入れても全く問題ない状態にしています。そのため、研磨作業は非常に丁寧におこなっています。角やささくれが怪我に繋がってしまうので、1つ1つ面を取りなめらかな触り心地になるよう加工しています。
『IKONIH』のおもちゃは、木材特有のざらつきが全くありません。CREATIVE ROOMの託児ルームでは、実際におもちゃを体験でき、からふるしょっぷで購入可能です。誕生日プレゼントや出産祝いにいかがでしょうか。
からふるショップ:https://karafurushop.thebase.in/
◆木材×パン屋さん。意外な組み合わせから新アイテムが誕生
−他にはどのような取り組みをされてますか?
A:井上さん
最近では、パン屋さんと一緒に仕事をしました。
−パン屋さんとコラボ? 意外です(笑)
A:井上さん
冷凍パンをメインで取り扱っておられる会社で、いろいろなホテルに冷凍パンを納品されています。
私たちは納品される際のパン専用ケースや木製のトレイを作ったり、納品実績は500件を超えました。
−私たちも知らないうちに目にしていそうですね。なぜそのような商品を作ろうと思われたのでしょうか
A:井上さん
その企業様は、おいしく食べられるよう一つ一つ配合を変えこだわった冷凍パンを作っていらっしゃいます。日本では朝食はササッと食べてしまいがちですが、ヨーロッパなどでは1時間くらい時間をかけて朝食を食べています。
木材を仕入れにヨーロッパに行く際に、すごく食事の時間を大事にしている光景をよく目にしました。海外のホテルのビュッフェスペースでも、寛いで食事ができるようなテーブルコーディネートや環境があるなぁと感じています。
日本でも、そのような食文化を意識してディスプレイしてもらえたら、パンのおいしさや魅力がより引き立つのではないかと思ったのが、コラボレーションのきっかけですね。パンに合うハチミツなども準備してホテルに提案するなど、小物の製作以外の企画提案もパン屋さんといっしょに取り組んでいます。
−なるほど。木製のトレイなどがあるだけで優雅な気分になれそうですね。個人的にも欲しいです!
◆「木粉ペレット」を活用した環境問題への取り組み
−ホームページを拝見しましたが、「木粉ペレット」も気になっています。破棄する端材を使った取り組みとありましたが、是非お話しお聞きしたいです。
A:井上さん
弊社では毎月約15トンほど木材の端材が出ます。製品を作り、木を加工すると、端材はどうしても出ます。また腐敗部分は安全面から見ても使用できず、カットせざるを得ません。
量が多く焼却処分にもお金がかかり、環境面から見ても好ましくない状況でした。それならその端材を有効活用できないかと考えたのが、木材ペレットの取り組みのきっかけです。
ちょうど同時期に、3Dプリンターがさまざまな業界で使われていることを知りました。プラモデルを作るイメージが強かったんですけれど、そうじゃないんだなと。それなら木材とプラスチック素材を混ぜ合わせて、新しいものを生み出せるのではないかと思い至りました。
−木材とプラスチックの掛け合わせ、そしてさらに3Dプリンターへという発想に驚きです。
A:井上さん
脱プラスチックを目指している時代ではありますが、完全にゼロにするのは難しいと思うんです。それならいま使っているプラスチックも有効活用できるよう、プラスチックを粉砕できるような設備も準備しました。
粉砕したプラスチックと木の端材を混ぜ合わせた素材をもとに3Dプリンターで造形をしたら、プラスチックの再利用など、いろいろなところで力になれるんじゃないかなと思っています。
そして使わなくなったら弊社で再び粉砕し素材に戻す。また造形して違うものに作り替えることもできます。
同じ素材を長く使うことができるので、環境問題を解決する一助になるのではないでしょうか。
−何度も繰り返して長く使える素材が、木粉ペレットなんですね。素材単位で考えるサイクルが素晴らしいです。個人でも3Dプリンタ―を使った依頼は可能でしょうか
A:井上さん
はい、お受けできます。現状では完成形のデータをお持ちいただくのがスムーズです。しかし、専門的な分野でもありますので、先ずはご相談いただき、その上でご要望の形を作ることができるよう、社内体制を整えているところです。
◆CREATIVE ROOMへの思い
−今回、CREATIVE ROOMの応援企業になっていただいた理由を教えてください。
A:井上さん
共働き世帯が増えている中で、街中に託児付きのコワーキングスペースがあるのは意義があるなと感じました。私自身も子育て中です。仕事をしながら子育てをするのは、大変だと感じる部分もあります。その中で、預ける場所の選択肢が増えるのはよいことだと思います。
−CREATIVE ROOMの中で「井上企画」として“やってみたい”ことはありますか?
▲OEM商品の一例
A:井上さん
『IKONIH』としてCREATIVE ROOMのご利用者と一緒に商品開発をしてみたいと思います。子育て中のママやパパの声をもとに、新しいおもちゃなどを作れたらすてきです。サテライトオフィスもありますので、他の企業の方とも新しい商品を生み出していきたいです。
◆新しいことに挑戦し続ける【井上企画】
木材を使った商品を開発し続ける「井上企画」様は、老舗材木店での実績と新しい分野への着眼点で、環境問題にも積極的に取り組まれています。CREATIVE ROOM内の中央にある託児スペースでは、『IKONIH』のおもちゃで遊ぶことが可能です。お越しの際は、ぜひ手にとって手触りや品質を確かめてみてはいかがでしょう。
「井上企画」様、ご協力ありがとうございました。
<企業情報>
井上企画
https://www.inouetimber.co.jp/
住所:福岡県大川市大字向島1998番地4
電話番号:0944-87-1515
kitoki
https://kitoki.jp/
IKONIH
https://ikonih.jp/